インフレの機能とその内容

5個400円だったりんごが、突然4個400円に。りんご1個あたりの値段が80円から100円になる、物価が上がり通貨の価値が下がる現象のことを「インフレ」と呼びます。一方デフレとは物価が継続して下落する状態のこと。どちらかが良い・悪いではなく、それぞれにメリットとデメリットがあります。

本記事ではインフレの内容をその機能について解説しました。インフレのメリットとデメリットを学習し、インフレによる影響を最低限に抑えるようにしましょう。スタグフレーションやハイパーインフレなどの用語についても解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

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・インフレとは
・デフレとは
・インフレの原因
・インフレのメリット
・インフレのデメリット
・ハイパーインフレとは
・インフレが生活に与える影響
・インフレに対して対策する方法

インフレの機能とその内容
出典 : 写真AC

インフレとは

インフレとは物価水準が全般的に上昇する状態を表す経済用語の一つです。物価が上がるということはお金の価値が下がるということ。例えば1つ100円でジュースが2本買えたとしましょう。

インフレの機能とその内容
出典 : ODAN

1本あたり50円で買えるのはお得なので人気が集まり、量を確保するために100円で1本しか買えないルールを作りました。こうなるとジュース1本あたりの価格は100円になります。ジュース1本あたりの値段は2倍になり、お金の価値は2分の1になりました。この状態がインフレです。

物価の状況は総務省が発表する「消費者物価指数」で確認できます。令和4年2月分の調査では、前年同月比で0.9%物価が上昇。1年間で0.9%のインフレが起こっていることがわかります。

デフレとは

一方デフレとは、物価水準が全般的に下降する状態のこと。バブル期以降の日本ではデフレの状態が続いていました。所得が上がらないため消費が冷え込み、物価が下がります。物価が下がることで企業は利益を見込めずリストラや倒産が相次ぐのです。

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また、貯蓄率はインフレのときよりもデフレのときの方が高くなります。これはデフレのメリットだといえるでしょう。特に急激なデフレは経済に与える影響が大きいため、日本銀行が公開市場操作を実施し市場金利を調節することで物価の安定を図ります。

インフレの原因

インフレの原因は一つではありません。減税、公共事業の増加、社会保障の充実、日銀による金利引き下げ、供給不足などさまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。例えば、新型コロナウイルス感染症の流行により世界全体の生産力が低下したこと、原油の生産力が低下して原油価格が高騰したことなどは、2022年に起きたインフレの原因です。

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また、インフレには「デマンドプル型」と「コストプッシュ型」があります。デマンドプルインフレは、サービスへの需要が経済能力を上回ったときに発生します。例えば人気アーティストのチケットが大人気のために売り切れ。チケットの転売が起こり、チケット代金は本来の3倍にもなりました。これがデマンドプルインフレです。一方、原材料の高騰によるインフレのことをコストプッシュインフレといいます。

インフレのメリット

実は日本銀行は物価安定の目標に「消費者物価の前年比上昇率2%」を掲げています。つまりインフレにはメリットがあり、緩やかな上昇であれば利益をもたらすのです。

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実際、デマンドプル型のインフラはお金が循環しますので、賃金上昇と同時進行すれば、好景気につながります。

お金が循環すれば給料が上がる

そもそもインフレとは、モノやサービスの需要が供給を上回ると発生します。その結果、お金が循環して企業の利益が増加し、従業員の賃金が上昇。賃金が上がればさらに消費が押し上げられ、消費活動が活発になるという好循環が生まれます。

外国からの観光客が増える

インフレが起こると円の価値が下がります。外国からの観光客にとっては、少ないお金で多くのものが購入できたりサービスが受けられたりしますので、日本に来ることはお得だといえるでしょう。

好景気が続く状態のインフレは購買力につながる

インフレではどんどん物価が上がっていくため、消費者には「物価が上がる前に購入しよう」という心理が働きます。そうすることで購買力が増加し、結果的に企業の利益につながっていくのです。一方、物価が上昇しても給料が上がらなければ、人々の生活は苦しくなるでしょう。

インフレのデメリット

インフレのメリットというのは、主にインフレにより消費活動が活発になり企業活動が盛んになった結果もたらされるものです。

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言い換えれば、消費活動が落ち込むインフレはデメリットにつながってしまいます。ここでは、インフレのデメリットを3つ解説します。

原材料価格が高騰する

為替の変動による輸入コストの上昇、世界的な需給関係の変化などが起きると、原材料価格が高騰します。生産者は販売価格の値上げをせざるを得ません。結果的に人々の生活にも影響を与えます。

海外旅行の費用が高くなる

メリットの部分で外国人観光客が増えるという点を紹介しましたが、日本円の価値が下がるため海外旅行の費用は高くなります。例えば1ドル100円であれば1,000ドルを10万円で購入できますが、円安が進み1ドル150円になると1,000ドルを購入するのに15万円かかってしまいます。

スタグフレーションが起きる可能性がある

スタグフレーションとは景気停滞とインフレーションを合わせてできた造語で、景気が停滞しているのにかかわらず物価が上昇しつづける状態のことです。

ハイパーインフレとは

インフレの中でも特に急激に物価が上昇し通貨の価値が下がる現象のことを「ハイパーインフレ」といいます。具体的には、3年で物価が2倍以上になると、ハイパーインフレ状態になっている可能性が高いといえるでしょう。厳密にはハイパーインフレは、国際会計基準において「3年間で累積のインフレ率が100%以上」と定義されています。

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ハイパーインフレの事例を見てみると、敗戦後多額の賠償金を迫られたことによるドイツのハイパーインフレ、エリツィン氏の下で市場経済に向けて経済改革が行われたことが原因で起きたロシアのインフレなどさまざま。

2008年のジンバブエの事例は記憶に新しく、大統領選挙をめぐる混乱と、過度の紙幣発行によりハイパーインフレが発生しました。100兆ジンバブエドルが発行され世界中を驚かせたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

インフレが生活に与える影響

物価という面で見れば、家計に影響を与えます。ただし、賃金も同時に上がっていれば、経済活動が活発になり景気は上向きになるでしょう。一方、インフレの状態で賃金が横ばい、もしくは下がるようなことになれば、消費は落ち込み経済はどんどん停滞していきます。

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また、生活する上で欠かせない住居費は、賃貸で月々家賃を払っている場合、インフレの影響を受けやすいです。一方、住宅ローンを組んでいる場合は借入をした分を返済するだけなので、比較的インフレの影響を受けにくいといえるでしょう。

インフレで影響を受けるのは、食費や日用品、光熱費、衣服など。家計のなかでどの部分がインフレの影響を受けやすいのか洗い出し、それをどのように補うのか対策しておくことが大切です。

インフレに対して対策する方法

日本銀行は金利を上げることでインフレを抑制します。しかし、それと同時に個人でもインフレに対して対策をする必要があるでしょう。インフレを乗り越えるには、インフレに強い資産を形成する必要があります。結論からお伝えすると、インフレに強い資産は、株式、外貨、貴金属です。

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インフレの際は家計は物価上昇の波を受けるものの、企業活動は活発になります。そのため、価値が下がる現金よりも価値が上がる株式を持つことが大切です。また、外貨を持つことでインフレのピンチをチャンスに変えることができます。さらに、貴金属のような価値が変動しにくい資産も持つこともおすすめです。

資産運用を成功させたいなら、分散投資と長期投資が大切。複数の資産に分散して投資することでリスクをできる限り避けること、5年・10年といった長期間で投資を行うこと、この2点を意識してください。

まとめ

インフレとは物価水準が全般的に上昇する状態を表す経済用語の一つです。例えば5%のインフレが起こった場合、今まで20万円だった生活費が21万円になってしまいます。ここれ収入も上がり消費活動が盛んになると景気が上向きに、反対に収入だけが横ばいになるとスタグフレーションにつながります。現金のみを保有していては、インフレやデフレなど経済状況に大きく影響されてしまうでしょう。インフレになっても受ける影響を最低限にするために、株式や不動産、貴金属などの現金以外の資産を持っておくことをおすすめします。

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