近年日本の新築マンションの数は年々減少し、価格は上昇。購入者が望む価格に対して相対的に住宅の価格が上がっており、それぞれに乖離が生じているといえます。コロナ禍により売れ残っていた物件や住宅を売る動きが高まったことから、アフターコロナの在庫戸数は過去最低水準となりました。
本記事では住宅ローンに関する基礎知識を紹介します。住宅ローンの仕組みを知ることで、複数の住宅ローンサービスをしっかりと比較することができるようになります。住宅ローンの金融相場や今後の動向などにも触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
住宅ローンに関する概要
住宅ローンは住宅の購入や改築のために組まれるローンのことです。融資額はさまざまですが、5,000万円から1億円が主流。銀行から借りるお金には利子がつき、利子を含んだ金額を毎月返済していきます。例えば3000万円を3%の金利で借りると、月々の返済額は3000万×0.03÷12=7万5000円です。
銀行のローンには、変動金利型、固定金利選択、全期間固定金利型の3種類があります。金利・保証料・手数料はそれぞれの銀行で異なり、さらに差別化を図るために団体信用生命保険の保障内容や、繰上返済の機能などさまざまなオプションが付与されています。
まずは種類を確認しよう
住宅ローンとは金融機関からお金を借りて住宅を購入し、借り入れ翌月から返金していくローンのことです。返済方法は、返済額が毎月同じになる「元利均等返済」と返済額のうち元金の額が一定となる返済方法である「元金均等返済」があります。
元利均等返済のメリットは返済計画が立てやすく返済開始時は返済額が少ない点です。一方、元金均等返済と比較して返済額の総額が多くなる点はデメリットだといえるでしょう。
元金均等返済のメリットは、返済すればするほど返済額が少なくなるところ。総額も元利均等返済と比べて少ないです。一方、返済開始時の返済額が多くなる点はデメリットだといえるでしょう。
住宅ローンに関する用語解説
ここでは、代表的な住宅ローンに関する用語を解説していきます。「担保提供者」とは、所有する不動産を担保物件として提供する人のことです。土地や建物が共有名義である場合、所有者全員が担保提供者であり、提供に同意する必要があります。
「非提携ローン」とは不動産会社を通さず、借り入れ希望者が自ら金融機関に直接住宅ローンを申し込む形のローンです。手数料が必要ないため一見お得なように見えますが、一連の手続きを自分で行わなければいけません。
「抵当権」とは、金融機関をはじめとした債権者(銀行)が債務者(住宅ローンを申し込む人)に対し、購入する不動産を担保とする権利を指します。住宅ローンの返済が行われなかった際に銀行側に不利益が生じないように設定された制度です。
手順を解説
1.来店したりインターネットを利用して調査をする
2.仮の審査に申し込む
3.仮の審査に通過する
4.本審査を行う
5.本審査に通過する
6.契約を実行する
7.融資が開始される
一般的な住宅ローンの申し込みから融資までの流れは上記の通りです。これは実店舗で申し込む際も、ネットで申し込む際もほとんど変わりません。手続きの流れは申込人の状況によって異なる場合があります。
住宅ローンは、不動産会社やハウスメーカーから紹介を受けるケースも。紹介先の住宅ローンを利用した方が手続きがスムーズに行きますが、必ずしも利用しなければいけないわけではありません。審査は仮審査と正式審査という2段階で行われ、仮審査には3〜7日、正式審査には1〜2週間かかります。
住宅ローンの申し込み条件・必要書類
住宅ローンは、審査に通れば利用できるわけではありません。審査にたどり着く前に、申込の条件を満たさなければならず、その上で返済負担率や職種・勤務先・雇用形態、借入比率が審査されることになります。住宅ローンは自分で住むための住宅購入、住宅ローンの借り換え資金に利用でき、銀行によっては住宅購入に関する諸費用までローンに含まれる場合もあります。
ここでは、住宅ローンの申し込みに必要な条件・必要書類についてまとめました。条件や必要書類は申込先の銀行によっても異なる場合がありますのでご了承ください。
必要な条件
住宅ローンで求められる条件には下記のものがあります。これだけではありませんが、一般論として覚えておきましょう。
・団体信用生命保険へ加入できる状態であること
・就業年数(会社員/自営業)
・前年度の税込年収と契約形態(会社員の場合)
・前年度の所得(自営業の場合)
・合算借入申込額が500万円を超えている(ペアローンの場合)
・物件の名義がペアの共有名義であること
勤続年数は最低3年、勤務形態は正社員でないと厳しいという意見が主流です。また、住宅ローン以外の借り入れがある場合は、年収の35%に収まらないと審査に落ちる可能性が高くなります。
住宅ローンの申し込みに用意すべきもの
近年多くの銀行では、Web上で申込用紙をダウンロードし、必要書類もWeb上にアップロードするだけで完了します。必要な書類は具体的に下記の通りです。取引先の銀行によっては発行半年以内の書類と限定されているケースがありますので注意してください。
・本人が特定できる書類
・収入の審査に必要な書類(住民税の課税証明書や住民税課税決定通知書など)
・物件の審査に必要な書類(売買契約書や重要事項説明書など)
他にも住宅ローン以外の借り入れがある場合は、返済予定表や返済用口座の通帳などの書類が必要になる場合があります。
住宅ローンにおける金利の相場
2023年現在、変動金利と固定金利ともに最低金利を更新しています。変動金利相場は2008年ごろは2%程度で上がりましたが、2022年には0.4%まで下がっています。一方、固定金利相場は2004年ごろは3%程度でしたが、2019年には1%程度まで下落。その後は少しずつ上昇しています。変動金利においては、現在でも上昇の兆しは見えていません。
注意点としては、諸経費を合わせた「実質金利」を必ず見ることです。金利の数字自体が低くても諸経費がかさむと結果的にかかる費用は大きくなります。具体的な金融商品を挙げると、auじぶん銀行の変動金利は実質0.219%と業界最低水準です。借り換えの場合は0.196%と0.2%を切る状態となっており、それに追従する形でPayPay銀行やイオン銀行、りそな銀行、みずほ銀行、ソニー銀行が0.3%まで金利を下げています。
ここまで金利の値下がりが起きると、心配なのは金利の値上がりでしょう。確かに現在は海外でも物価上昇を抑えるために利上げを実施している国も多く、万が一日本でも利上げの方向に傾いた場合、住宅ローンの金利も連動して上がっていくことになります。そうなると当たり前ですが借入額が減少し、住宅市場は冷え込んでいくでしょう。
最後に確認すべきチップ
住宅ローンを借りるのに最も大切なことは、借入金額と返済期間のバランスです。安定的な職業に就いているのか?今後はどんなライフプランを描いているのか?など未来に目を向けた上で金額と返済期間を決めましょう。また、繰上げ返済についても注意が必要です。一時的に余裕があったとしても無理して繰上げ返済をしてしまうと、後々その何倍も苦労してしまうかもしれません。特に子どもがいるご家庭は、住宅ローンと教育資金のバランスを慎重に考慮してください。
大切なことがもう一つあります。それは、住宅ローンの実施後すぐに仕事を転職しないことです。仕事の安定性を評価されローンが通ったのに、すぐに転職してしまうと信用を失うことにもなりますし、何より住宅ローンを返せる保証が薄くなってしまう可能性があります。
最後に重要なのは、変動金利型の金利は半年ごとに見直されるが、元利均等返済の見直しは5年ごとという点。元利均等返済で金利が上がってしまうと毎月利息を返しているだけでローン残高が一向に減らない…なんてことも。こうなってしまうと住宅ローンの返済が経済的にも精神的にも負担になってしまいますので、ローンを組む際は事前に把握した上で検討するようにしましょう。
住宅ローンを実際に借りた人の声
ネットで住宅ローンを借りたユーザーの口コミを見てみると、「勤務している会社の系列銀行だったので」「金利が低かったので」「金利の安さや手数料の安さで選んだ」など、ローンを選んだ理由は人それぞれのようです。
プラスの口コミをまとめると、手続きがネットでできる点がよいと評価している人が大勢いました。また、対面ではさまざまなサービスへの勧誘がありますが、ネットの場合はそのような勧誘もないため、安心したという意見も。融資までのスピードが実店舗だとネットよりも早いという点を評価している人もいました。
一方マイナスの口コミでは、ネット上で手続きできるのにFaxでの送信が必須であって面倒だった、という意見も。また、誰かに相談したいときに相談できる環境がなかったという口コミもありました。また、自分が申し込んだ後に他社でさらに低い金利の住宅ローン商品がリリースされ悔しい思いをしたという人もいます。
まとめ
2023年の住宅ローンの動向としては、全体として低金利となっており、各社の金利引き下げの動きが加速しています。しかし一方で海外では、物価上昇を抑えるための利上げの動きもあり、日本がその流れを組む可能性も排除できないでしょう。日本の住宅市場の取引の8割は新築住宅といわれています。ただし数が減り続けていることから価格はバブル期の水準まで戻っているため、価格を落としたい方は中古マンションや中古戸建てを検討も視野に入れてみてください。借入額を低くしたり、夫婦で共同の住宅ローンを組むことでより審査に通りやすくなります。