系列店のメリットは?多店舗展開を成功させる秘訣を解説

トヨタ自動車やパナソニックなど製造業の多くで用いられている「系列」というビジネスモデル。意外かと思うかもしれませんが、実は系列店という概念は日本独自のもので、英語でも「Keiretsu」というそのままの単語で通じます。

本記事ではそんな系列店の定義からメリット・デメリット、量販店やチェーン店との違いまで幅広く解説しました。系列というビジネスネットワークを活かして多店舗展開を成功させる秘訣をぜひ探っていきましょう。

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・系列店とは?
・流通系列化とは?
・系列店のメリット
・系列店のデメリット
・海外の流通系列化の成功例
・系列店・量販店・チェーン店・フランチャイズ店の違い

系列店のメリットは?多店舗展開を成功させる秘訣を解説
出典 : 写真AC

系列店とは?

ビジネスにおける「系列」とは企業同士が結びつきを持つこと。元手の企業と系列店は資本関係で結ばれていますが、系列店は元手企業から完全に独立しており、直営店やフランチャイズ店とは一線を画しています。

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系列店の歴史は古く、第二次世界大戦後に日本の財閥が解体したことがきっかけです。それから高度経済成長期に入り、系列というビジネスネットワークは瞬く間に広がっていきました。

系列というビジネスネットワークは現在も引き継がれており、車のディーラーやコンビニなどの小売店で広く採用されています。また、パナソニックなどの電機メーカーでも流通系列化は活発に行われており、パナソニックの系列店は「街の電気屋さん」として地域に根付いています。

例えばパナソニックの系列店は「パナソニックショップ」と呼ばれており、両者の資本的なつながりはほとんどありません。一方、トヨタの系列店は「ディーラー」と呼ばれており、現在「トヨタ」「トヨペット」「カローラ」「ネッツ」「トヨタモビリティ」の5種類が展開されています。

流通系列化とは?

「流通系列化」とはメーカーが企業としての優位性を獲得するため、卸売業者や小売業者と系列の関係を結んで組織化することです。

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流通系列化には「専売制」「一店一帳合制」「テリトリー制」「店会制」の4種類があります。専売制とはメーカーと系列店が特約店として専売契約を結ぶことで、一店一帳合制とはメーカーが系列店に対し仕入先の卸売業者を1社に指定する契約です。

系列店が特定地域での販売権を与えられる契約はテリトリー制と呼ばれ、店会制とはメーカーが系列店を「店会」と呼ばれる協同組合に加盟させ組織化する制度のことを指します。

流通系列化のメリットはメーカーが生産から販売までの基盤を築くことができる点。一方、商品がメーカーのネームバリューで売れてしまうため、系列店の企業努力が不足する場合がある点はデメリットだといえるでしょう。

系列店のメリット

系列というビジネスネットワークを結ぶメーカー側のメリットは、投資をすることなく系列店が自社製品を販売してくれることです。系列店は原則メーカーから独立した存在なので、損失が出たとしても自社の経営に大きな影響はありません。

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また、メーカーと系列店という関係を結ぶことで情報のやり取りが綿密になり、双方にとって発展の可能性が増加します。調達、製造、販売、消費などが一元化されるため、サプライチェーンの効率化にもつながるでしょう。

系列店にもメリットがあります。それは、系列の関係を結ぶことでメーカーの製品を優先的に供給してもらえる点です。系列店としては他社との差別化にもつながりますし、有名メーカーの系列店になれば、顧客からの信頼も得ることができるでしょう。

系列店の多くは中小企業であり、大企業であるメーカーのネームバリューを利用してビジネスができるという点は、大きなメリットとなります。

系列店のデメリット

まずは顧客の立場から系列店のデメリットを考えてみましょう。それは系列店で物を購入する際、選択肢が狭められるという点です。基本的に特定メーカーの製品しか置いていないため、さまざまな製品を比較した上での購入が難しくなります。

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メーカーの経営状況や評判の影響を受ける点は、系列店にとってのデメリットだといえるでしょう。いくらメーカーから独立した存在であるとはいえ、メーカーの看板を借りてビジネスをしている限り、顧客にとっては関係が深いと思われても致し方ありません。

メーカーにとってのデメリットもあります。それは、多店舗展開には経費や人材の確保が必要となる点です。経営管理も複雑になるため、仕入れに関するミスが起こったり、赤字経営の店舗を見落としたり、経営にマイナスの影響を与えることもあるでしょう。

海外の流通系列化の成功例

流通系列化の動きは日本国内だけでなく海外にも広がっています。例えばP&Gとウォルマートの製販連携した事例は一つの成功例だといえるでしょう。P&Gはウォルマートという巨大な販路を手に入れ、ウォルマートはP&Gの製品を安定的に仕入れることができ、受注システムを効率化することができています。

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また、スウェーデンの重工業会社であるScania(スカニア)は日本の日野自動車と系列店契約を結び、自社製品を「日野スカニア」として販売し成功した例だといえるでしょう。世界第3位の生産台数を誇るスカニアは、同じように欧米企業とも数多くのビジネスネットワークを結んでいます。

自治体単位で系列店を海外に展開している事例もあります。例えばFooLaBはカンボジアで日本食レストランを展開している企業ですが、系列店として現地で寿司屋や居酒屋を展開、2021年には5店舗目となる焼き鳥屋もオープンしました。

系列店・量販店・チェーン店・フランチャイズ店の違い

まず系列店と量販店の違いですが、系列店がメーカーから直接仕入れをし基本的に価格対応を行わないのに対し、量販店は大量の製品を仕入れして安値で販売します。一方、系列店は地域に根付いたサービスを行うのが一般的ですが、量販店にはそのような細やかなサポートはありません。

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また、系列店とチェーン店については、系列店がメーカー側と完全に独立しているのに対し、チェーン店は接客からマニュアルまで元手企業のコピーのような存在です。

最後に系列店とフランチャイズですが、系列店があくまでもメーカー側とのパートナー的関係であるのに対し、フランチャイズは企業から経営の権限を一任されています。フランチャイズの場合は権利の対価として「加盟金」「保証金」を支払い、開業後は「ロイヤリティ」などの必要資金を支払うのが一般的ですが、系列店にはこのような仕組みはありません。

まとめ

系列というビジネスネットワークについて解説した本記事を読み、メーカーと系列店の両者にメリットがあることがお分かりいただけたでしょうか?系列という仕組みは、メーカーにとっては在庫を抱えるリスクを減らせ、系列店にとってはメーカーの看板を使って販売ができるというwin-winの関係を築けます。多店舗展開を成功させる秘訣は、系列という仕組みのメリットとデメリットを把握し、見落としのない経営管理をメーカーと系列店の双方が続けること。メーカーが系列店を搾取するのではなく、どちらにもメリットがある形を維持することが大切です。

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