金融広報中央委員会が2019年に実施した「家計の金融行動に関する世論調査」によると、金融資産を保有していない人の割合は2人以上の世帯の場合23.6%、単身の世帯の場合38.0%だったそうです。単身世帯ではおよそ3人に1人が貯金なしと、いかに貯金をするのが難しいかを示す結果となりました。
今回紹介するのは、今ある貯金を上手に管理して増やすための5つのヒントです。筆者もかつては貯金ゼロの生活が当たり前でしたが、これらのヒントを実践することで1年で100万円貯めることに成功しています。ぜひ本記事を参考に、ストレスを溜めながら貯金をするのではなく、無理なく楽しく資産を増やしていく術を学んでいきましょう。
1. 目標金額とそのために必要な貯金額を把握する
総務省が2021年に行った家計調査では、二人以上の世帯における2020年平均の1世帯当たり貯蓄現在高は1791万円で、2020年に比べ36万円の増加となったそうです。「まずは100万円を貯めたい」ーー多くの人はこんな風に貯金の目標を立てますが、100万円貯める第一歩は1万円の貯金から。100万円を貯めるには具体的に月々いくら貯金したらよいのか具体的な目標を立てましょう。
例えば1年で100万円を貯める場合、月々8万3,333円を貯金しなければいけません。一般的に貯金の割合は月収の3割程度といわれていますので、この金額を貯金するには手取り25万円の人が月収の3分の1を貯金すると考えるとわかりやすいでしょう。
さらに月に5万円貯金をする場合は1年8ヶ月、3万円なら2年9ヶ月、2万円なら4年2ヶ月かかります。ただし、これらの数字はあくまでも「何事もなかった場合」です。突然病気をして入院したり、仕事量が減って給料が減ったり、突然の出費が必要になることもあるでしょう。数字はあくまでも目安として、最低限の文化的な生活と健康を保った上で預貯金を行ってください。
2.現金だけでなく外貨・保険・投資など資産を分散する
資産は「実物資産」と「金融資産」にわけられます。実物資産とは純金や貴金属、不動産など、実物そのものに価値がある資産のことです。一方金融資産とは、預貯金や株式、投資信託など、実物資産以外の資産を指します。ここでは、特に金融資産について掘り下げて考えてみましょう。
金融資産と聞くと現金を思い浮かべるかもしれませんが、金融資産は預貯金だけではありません。株式や債券だけでなく、商品券や生命保険も金融商品に含まれます。これは投資でもよく言われることですが、金融資産は分散した方がリスクが低くなるでしょう。なぜならば値動きやリスクは商品や時期によってバラバラだからです。資産を分散しておけば、どれか1つの価値が下落しても、他の金融商品でカバーできます。
日本では資産の半分以上が預貯金で保管されているそうです。投資に抵抗があり預貯金に対する安心感があるのもわかりますが、銀行が破綻しないとはいえません。銀行にはペイオフ制度という、銀行が破綻したときに元本と利息を1,000万円まで保証する制度があります。ペイオフ制度も上限が1,000万円と決まっていますので、預貯金に関しても複数の銀行に分散するのがよいでしょう。
3.自動的に貯蓄が貯まる仕組みを作るのもおすすめ
毎月コツコツ決まった金額を預貯金にすることも大切ですが、それと同時に自動的に貯蓄が貯まる仕組みを作ることもおすすめ。例えば「積立式定期預金」「つみたてNISA」「iDeCo(個人型確定拠出年金)」などは自動的に貯まる仕組みの代表的なものです。
積立式定期預金とは給料が振り込まれる口座とは別に、定期預金用の口座を作り、毎月決められた額を貯金していく方法。積立式定期預金は一般的な普通預金よりも金利が高い傾向にあり、例えばイオン銀行の場合普通口座の金利は0.001%ですが、積立式定期預金の場合は0.01%と10倍になります。
「つみたてNISA」は少額の分散投資をするための非課税制度です。つみたてNISA口座を作成した場合、対象の投資(公募株式投資信託とETF)に対する利益が毎年40万円、最長20年間非課税になります。「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は政府が支援する私的年金の一つです。iDeCoの積立金は所得控除の対象になり、節税効果も期待できます。
4.理想的な食費は給料の15%
理想的な食費は給料の15%といわれています。例えば月収30万円なら食費は4万円〜5万円が理想的です。しかし、食費を15%に抑えることは簡単ではありません。月に4万円しか使えないとなると、1日に使える食費は1,333円。飲み会に行けば5,000円ほどの出費になりますし、東京でパンケーキを食べるにも1,500円はかかります。個人的には月によっては25%(月収30万円なら月7.5万円)を上限とすると、ストレスのない生活ができるかな、と感じました。
どうしても食費がかかりすぎてしまうという方は、週単位で支出を管理してみましょう。例えば食費を月に8万円と設定した場合、週に1回は食費を2万円に抑えることができたか確認してください。マイルストーンを設置することで、より目標に沿って節約ができているか把握しやすくなります。
自炊をする際は、買い物は週に1回〜2回、作りおきをしておいて数回に分けて食べるなど工夫することが大切。鶏肉(100g70円目安)や豆腐(1つ50円目安)、トマト缶(1つ80円目安)など安くて栄養のある食材を選びましょう。
5.家計簿で収支をきちんと把握しよう
家計簿をつけることは間接的に貯蓄を増やすことにも繋がるでしょう。家計簿とは収支と支出を記録したもので、ノートでもアプリでもつけられます。日本初の女性新聞記者である羽仁もと子氏が1904年に考案しました。
家計簿をつけることの最大のメリットは、無駄遣いをなくせること。毎日の消費動向を把握することで、無駄な出費を抑えて計画的な貯蓄に役立てられます。また、家計簿をつけることで「使途不明金」を炙り出すことも大切です。いつお金をどんな風に使ったのか、出費が多い月にはどんな傾向があるのかを把握することで、貯蓄に回すお金を把握しやすくなります。
注意点としては家計簿の目的は「収支を記録すること」ではなく「収支を記録して家計を改善すること」なので、家計簿をつけただけで満足せず、結果を貯蓄管理に反映できるようにしましょう。
まとめ
貯蓄を管理して増やすことは簡単ではありませんが、予算内で管理できるか、どれくらい貯蓄が増えたか、ゲーム感覚で取り組めると貯蓄が楽しくなります。貯蓄は我慢して無理やり義務的に絞り出すのではなく、大きな期間で収支の流れを把握し、削れる部分を上手に削ることで作り出しましょう。貯めることではなく貯めたお金で何をしたいか、その目標を常に頭に入れておくことを忘れないでくださいね。